ブルージュ

中世が封印された街

かつて私のイメージの中にあったブルージュは、
ベルギーの作家ローデンバックによって19世紀末に描かれた
『死都ブルージュ』のイメージ(上の絵葉書のような)

美しい亡き妻の面影を求めてブルージュの街を彷徨する主人公・ユーグ。
小説の中に漂うのは、夕暮れの運河、古い修道院、夜の石畳、
鳴り響くカリヨンの音、弔鐘、澱んだ水、生気のない町、憂愁、死のイメージ、、、

でも、このイメージが却って当時のヨーロッパの人々の旅心をさそったのか、
ブルージュは観光の街として甦る。そして中世の佇まいは今なおそのまま残しながらも
町は観光客であふれ、賑わいと活気を見せている。

ブルージュの絵葉書より

↑町の中心 マルクト広場(英語式に言えばマーケット広場)
商業で栄えた町の広場はギルドハウスが取り囲んでいる。

13世紀〜15世紀のブルージュはハンザ同盟の拠点として交易の中心であり、
また世界最初の常設の両替所が出来、ヨーロッパの金融センターでもあった。
ブルージュは10世紀頃からフランドル産リネン繊維や毛織物の商業都市としとして栄える。
北海と運河によって結ばれ貿易港としても栄えたが、15世紀末、北海から流れ込む砂によって
運河が埋まり貿易船の運航が出来なくなり、急速に衰退する。
町は19世紀末まで400年もの間、産業化にも近代化にも取り残され忘れ去られて
封印されたかのように中世そのままの姿でひっそりと眠りについていた。

マルクト広場のギルドハウス →
階段状の切妻屋根にはそれぞれの  
ギルドを識別する飾りがついている。  
ギルド(特権的同業者組合)  

← マルクト広場に面した州庁舎 
19世紀に建てられた
ネオ・ゴシック様式。
今は右半分が郵便局になっている。

旧市街には、マルクト広場と もう一つブルグ広場がある。
市庁舎、公文書館、裁判所、聖血礼拝所など12〜18世紀の建物があり、
行政の中心地として栄えた。マルクト広場より小ぢんまりしているが、昔ブルグ広場のあった地は
北海に面した浜辺であり、4〜7世紀には定住が始まった。
バイキングとの争いに備えて海辺に城を築いたが、その地がこのブルグ広場だという。
〜〜歴史のロマンを感じてしまいます〜〜

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市庁舎 → 

フランドル伯の館(ブルグ)として
14世紀に建てられた、ブルージュで
最も古い建物の一つ。

← 市庁舎2階には世界的に有名な
豪華なゴシック様式のホールがある。
アーチには12ヶ月の情景、壁面には
12枚の壁画が並び、
ブルージュの歴史にかかわる
出来事が描かれている。

現在は会議場、結婚式、レセプション
などに使われている。
私達が訪れた時には、市長さん
立ち合いで結婚式が行われていた。

直径1q位の楕円形の町は運河に囲まれ、4つの城門を持つ。
町に入れば縦横に巡る運河と橋々、煉瓦を階段状に積み上げた破風屋根の家並み。
「街中が天井のない美術館だ」と言われるように、ブルージュは
まるでタイムトンネルの向こう側にさまよい込んでしまったような不思議な魅力を持つ町だ。

     ↑聖血礼拝堂(画面中央、ファサードに金色の像が並ぶ建物)
12世紀、第2次十字軍遠征に参加したフランドル伯がコンスタンチノーブルから
「キリストの血」とされる液体(「聖血」)を持ち帰り、一族の礼拝堂に安置した。
これが聖血礼拝堂であり、代々のフランドル伯や金羊毛騎士団、ギルドの商人達の
祈りの場になった。
因みに「金羊毛騎士団」とブルージュ、ストで途中下車したリールとは深い関係があり、
大好きな話題でワクワクするけれど、今回は割愛・・・

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石畳の道を行く〜〜〜

← 鐘楼

マルクト広場に面した高さ83mの塔。13世紀の建築だが、四隅の小さな塔は14世紀に付け加えられ、
最上階の八角形の塔は15世紀末に完成した。世界遺産に登録されている。

カリヨン(組み鐘)→

全部で57個の鐘から成っている。
各鐘の重さは15〜5000s。カリヨン奏者によって
鳴らされることもあるけれど、たいていは機械仕掛けで
日中は15分毎に鳴らされている。

狭くて急な366段の階段を上ると、街全体の素晴らしい景色を望むことが出来た。
ハーハー フーフー (;-.-;) 上ってきた甲斐があった\(^O^)/

「生気のない水辺と通りのものいわぬ大気の中にいると、ユーグはあまり辛いと思うこともなく、ますますゆったりと死んだ妻のことを思った。よりはっきり彼女が見え、よりはっきりしゃべるのが聞こえ、運河に沿って道すがらオフィーリアのようなその顔を見付け、遠くのくぐもったカリオンの歌声の中にその声を聞いたのだった。」 
    〜〜ローデンバック『死都ブリュージュ』より(窪田般彌・訳  岩波文庫)〜〜

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